2012/10/18

ルネサスの行方 1.

業界の端っこで働いてきた老兵として、半導体ビジネスについて時々書きたいと思います。

ルネサスが立ち行かなくなり、外国系ファンドの下に入り、細切れに分割清算されるところでしたが自動車会社の支援を得ることになりました。なぜ、門外漢の自動車会社が支援することになったのでしょうか。

1980年代世界に君臨した日本の半導体メーカーでしたが、設備産業である半導体の生産に関して国や税制で支援を受ける台湾、韓国の設備投資力の前に、完全に競争力を失いました。
2003年経産省の指導の下、それまで別個に半導体を生産してきた日立と電力系を除く三菱其々の半導体部門が生き残りをかけて提携し、システムLSIの分野では当時世界一のルネサスを創設しました。
Docomoのガラ携に使われる専用システムLSIを獲得していたこともあり、一時は大変好調でした。国内ダントツのシェアー誇ったDocomoですが、その技術の中核となった1999年iMode、2001年FOMA(W-CDMA)通信方式は発表当時世界最先端の技術で、Docomoと共同開発する日本の携帯電話メーカとそれにつながる半導体メーカーの共同戦線で技術を磨き上げ、技術を囲い込みました。通信方式としては、利用面でやや早すぎた事もあり世界標準とはなりませんでした。

日本の携帯電話市場にSoftBankやAUが参入し、米国Appleや台湾HTC、韓国Samusung、LG等の携帯やスマートフォンが国内市場で販売されることになりました。Docomoも携帯市場でのシェアーを維持するために、外国製の携帯電話も販売するようになりました。外国通信機メーカーの強みは日本市場だけでなく世界の市場で使われるため生産台数が桁違いであることです。桁違いの生産数であれば、使われる半導体の価格はものすごく安くなります。

半導体は、コピペした印刷物を、一個づつ切って、売るようなものです。出来るだけ縮小してコピーしたものを、一度に何百枚も切り取れるようにすれば1個当たりはものすごく安くなります。
出来るだけ大きくて薄いコピペする丸い用紙(実際は直径30センチのシリコン製基盤)の出来るだけ小さく印刷すると、端の部分の丸みのところで出るロスも少なくなりますので、その面でも大きな用紙に小さくコピーが出来る装置があれば誰でも安く作れるようになります。(この辺りは後日書きます)
このページトップに戻る


半導体が安ければ、通信機器も安くなり、大量に作るならApplegaしているようにFoxconn等の中国での組み立てメーカーに委託すれば、組み立て費も安くなります。
日本メーカーはDocomoと共同開発した技術を、メーカーごとに自社の2~3世代古い設備の自社工場でつくり、自社の地方工場で組み立ててきました。
世界で見れば、大きくないDocomo用に自社のシェア分だけ生産するわけですから、生産台数には村の相撲大会と本場所ぐらいの差が出ます。デザイン・開発・金型などの経費がほぼ同じと考えれば1台当たりのコストがかなう訳がありません。
日本メーカーは従業員の年金も心配し、高い土地に、高い不動産税も払って広大な工場を保持してきました。日本メーカーのバランスシートの片側の大部分は土地と建物と設備であり、反対側はこれらを買った借入金です。
Appleはどうでしょう、保有している資産の多くはFoxconnなどの株式であり。これを買ったのは積み上げてきた利益からです。
Appleは毎四半期配当をFoxconnなどから得ますので、キャッシュバックが有る様なものですが、日本メーカーは不動産税を払い、借入金の金利を払います。
半導体部品でも何でも、自社内で作ろうとするのを巣直統合型生産と言いますが、Appleのように委託して生産することを水平分業型生産と言うようです。AppleはMacのころから日本Xeroxなどに生産委託していましたので、こういった生産形態のプロであったわけです。日本の電機メーカーもコンピュータに関しては、受託生産して稼いできたのに、そろって垂直統合型を目指したのは不思議な、日本人の本質を覗かせる話です。

前置きがながくなってしまいました、何故自動車メーカーが、、は次回で。
ルネサスの行方 2.を読む


0 件のコメント:

コメントを投稿

ご感想・アドバイスをお願い致します。